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The world is legalizing same-sex marriage, while Japan is...
2022年7月21日、日本と台湾の男性カップルが台湾当局による婚姻届の不受理を不服として処分取り消しを求めた訴訟で、台北高等行政法院は受理を命じる判決を言い渡した。台湾で「同性婚」かつ「国際結婚」が法的に認められたカップルは4例目になる。
この日本人と台湾人のカップルが、日本政府を相手に同性婚と市民権を得る選択肢を考えなかったはずは無かろう。しかし現実的に日本では、それは遠く及ばぬ物語である。直近の国内判例をみると、6月20日に大阪地方裁判所が同性婚訴訟を起こした3組の日本人カップルに対して、「同性婚を認めない民法の規定は憲法に違反しない」と、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」とする憲法24条を支持する判決を下している。大阪地裁のこの判決に対し、BBCやロイターなど各国メディアは強く否定的な報道をしている。また多くの国際人権団体が異議・声明を唱えている。
2022年現在の世界基準では、日本・米国・英国・ドイツ・フランス・イタリア・カナダで構成 される先進7カ国首脳会議にロシアを加えたG8で、同性婚が認められていないのは日本とロシアだけである。従って、現時点で日本人と外国人のカップルが同性婚と市民権を得るための手段は、国際結婚で国籍を変えて他国の市民権を得るしか方法はない。
日本政府はこの問題に正面から取り組むことをせず、各自治体に「パートナーシップ制度」の是非を問う姿勢であり、性的少数者やマイノリティの人権に対しては一貫して非常に厳しい条件を課している。
世界における同性婚の合法化は、2001年オランダ、2003年ベルギー、2005年にスペインとカナダ、2006年南アフリカ、2009年スウェーデンと続き、台湾はアジアで最も早く2019年に同性婚が合法化された。2022年現在、世界31の国や地域で同性婚が正式に認められている。
しかし、同性婚を政府が認めたとしても、個人が暮らしやすい社会が形成されているか否かは別の話である。特に同性婚問題に対して、キリスト教的思想を基盤に大きく世論が分かれているのがアメリカだろう。
米国の同性婚の動きは、04年5月、マサチューセッツ州最高裁で初めて合法化されたことを皮切りに、08年5月にカリフォルニア州 (しかし同年11月に再び違法化)、同年10月にコネティカット州で合法化された。2009年4月には、アイオワ州とバーモント州、続く5月にメーン州、6月にはニューハンプシャー州で同性婚を合法とする州判決が相次いだ。州による違いはあるものの、米国民の同性愛者に対する許容度の変化は歴史的にも興味深い。というのも17世紀以降、清教徒・ピューリタンによる神権制社会が長く市民思想を支配してきたアメリカ社会で、かねて保守層が多いとされ黒人奴隷制度下に植民地政策を切り抜けてきた東海岸から同性婚の合法化が進んだ経緯に興味深さを感じるからだ。
その後、米国における同性愛者の権利問題は、1960年代の公民権運動に端を発し、80年代のエイズ問題でより一般化した。しかし、共和党の第41代ジョージ・H・W・ブッシュ大統領政権 (1989-1993) では同性婚を違法とする政策が取られ、一時期議論の進展が阻まれた。とりわけ湾岸戦争中の軍隊において、ゲイの入除隊に関する問題が度重なり議論された経緯があり、米国社会における同性愛者の権利問題は暗礁に乗り上げていた。
1993年、カウンターカルチャーの象徴と評された民主党若手のウイリアム・J・クリントン氏が、アメリカ歴史上初めて同性愛者の人権を支援する立場で選挙戦に立ち、サンフランシスコを中心に栄えた同性愛・両性愛者へのqueer-bashingに反発する多くの同性愛者たちがこの政策を熱烈に支持した。この大統領戦でクリントン陣営は性的マイノリティや社会的弱者から多くの票を集めてブッシュ陣営に勝利し、第42代ビル・クリントン政権が発足している。こうして半世紀以上もの長い闘いを経て、2015年に米国の同性愛者たちは、自らの同性婚の公的権利を勝ち取ったのだ。しかし未だに全米世論調査によると、「父親と母親の存在があってこそ、心身共に健やかな子どもが育つ」という保守派の考えには根強いものがあり、最近では人工妊娠中絶の是非も含めて、同性婚に関する否定的議論が再び高まりつつある。
この問題、現実的に日本においてはいかがだろうか。日本では、同性を好む同性愛者ないし両性愛者や、自分の体と心の性が一致しない状態のことを、一般には「性同一性障害」と称している。歴史上、二つの大戦を経験し「産めよ、増やせよ」と富国強兵をうたった日本では、国力に寄与しない同性愛者は極端な排除を受けた過去もある。戦後、時を経て2000年前後になり、国内でも同性婚の合法化を検討する動きが本格化した。その際、戸籍法・第113条における続柄の記載上、同性同士の婚姻をどのようにすべきか議論されたが、そもそも同性婚者の戸籍をどう登記するかの問題は、欧米諸国では浮上していない。戸籍登録制度は欧米には存在せず、東アジア独自の国家が個人を管理するシステムだからである。
世論を受けて2003年7月、国内では「性同一性障害特例法・第111号」が法令化された。道は開けたかに思われたが、この法は次に示す大変厳しい条件が課せられている。
(1)20歳以上であること(2)現に婚姻をしていないこと(3)現に未成年の子がいないこと(4)生生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(5)その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること、の5つの条件と家庭裁判所の審判の必要性が明記された。このうち要件(4)と(5)は、概ね性別適合手術を受けていることを義務付けるものである。
文面に従い性同一性障害が同性婚を望む際、結婚や未成年の子供の有無のみならず、専門機関で性別適合手術を受けない限りその権利は認められないことになる。条件のハードルではあるが、法に従い性別適合手術を経て戸籍上性別変更が家裁で申請された件数は、既に国内で数千例以上に上り、中には性別適合手術の可能な医療施設が見つからず、タイなど海外に渡航して性別適合手術を受ける事例も問題視されている。
人類の同性愛に関する記述は、ギリシャ神話の悲劇『タミュラース』や聖書など古くから度々登場している。プラトンの『饗宴』や夏目漱石の『こころ』においても、精神的な結びつきを有する男性同性愛にまつわるテ―マが美しく記されている。きっと同性愛や両性愛とは歴史を問わず存在してきた事実であり、古来より人間の持つ愛情の一面かも知れない。そう考えると異性同士しかカップルと認めない考え方は、一つの固定観念だと思いませんか。
世界的に合法化が進んでいるこの人権問題に対して、日本政府がどれだけ柔軟な対応をとれるか、今まさに国際社会からその真価が問われている。
【参考URL】
台湾 同性婚を巡る法案が可決 アジア初 https://www.bbc.com/japanese/48305927 BBC (2019/05/17)
日本と台湾の同性カップルの婚姻届けの受理命じる 台湾の裁判所https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220721/k10013729201000.html NHK (2022/07/21)
米下院 同性婚保護法案を可決 https://www.bbc.com/japanese/62235297 BBC (2020/07/22)
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