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科学が実現する寿命300歳-その時、人類の姿は?
2022年7月末、厚生労働省の発表した簡易生命表によると、2021年の日本人の『平均寿命』は、男性が81.47歳、女性が87.57歳だった。 とりわけ時勢を反映したのは、新型コロナウイルス流行の影響である。この度の値は2020年と比べて、男性は0.09歳、女性は0.14歳短くなった。年々延び続けた平均寿命であるが、前年を下回るのは東日本大震災の影響があった2011年以来、10年ぶりのことである。
とは言え、統計に参加した世界197カ国で日本は、男性がスイス81.6歳とノルウェー81.59歳に次ぐ世界3位、女性は韓国86.5歳とシンガポール85.9歳を押さえ、昨年に続き世界一の長寿国であった。一方、世界の平均寿命をみると男性が71歳、女性が76歳。そして最も平均寿命の短かい国は、男性が中央アフリカ共和国とレソトの52歳、女性は中央アフリカ、チャド、西アフリカ、シエラレオネの57歳であった。この10年で、平均寿命が長い国では約5年、短い国では約10年ほど世界の寿命は延びている。
「人生100年時代」というキャッチフレーズが独り歩きしているが、命の長さと健康に生きることはけして同じではない。このジレンマを解消するのがいわゆる『健康寿命』である。2021年末、日本人の健康寿命について厚労省は、男性72.68歳、女性75.38歳と発表している。我々はこうしたデータに対して、どう理解し向き合うべきなのだろうか。
平均寿命が医療のみで決まるわけではない。また人の幸せと平均寿命に比例関係などない。しかし国民医療費の削減が叫ばれる中、日本の医療者はこれだけの数字を保持していることにもっと誇りを持つべきだろう。そしてこの国に生まれただけで世界最高水準の医療にアクセスできることを、私達は心から感謝するべきだとつくづく思う。
高度先進医療が極限まで進んだ暁に、果たして人の寿命は何歳まで延ばせるのか。このペースで平均寿命が延びると、今日の子供たちは一体何歳まで生きることができるのだろうか。
米ハーバード大医学部のデビット・A・シンクレア氏らを筆頭とする老化研究者の間では、「いまや老化現象は治療可能な病である」と言う意見が通説で、現代より医学が進んだ2070年の平均寿命を113歳と試算している。しかもこの予測は最低ラインの試算で、将来的に分子細胞・遺伝子工学水準の向上、細胞の老化に関連している染色体末端部・テロメアの複製技術の開発、p53ないしRbプロテインの操作により細胞のアポトーシスや不死化・癌化をなくすイノベーション技術がクリアされたら、平均寿命は150歳を遥かに超える予測まである。
さらに異次元なヒューマロイド的な予測では、遺伝子操作と工学技術にAIテクノロジーを融合させることで、究極の医療をうたう「エリクサー」や「クロノジェン」などの次世代ベンチャー・キャピタルバイオテクノロジー会社は、「将来300歳に達するであろう人間が、もう既にこの世に生まれて存在しているはずである」とまで予言している。
「人生300年時代」となると、人生設計など全く読めない年月であるが、ならば人類は、平安末期『今昔物語集』の逸話で、月に宿ることで永遠を手にした兎のように、いつの日か永遠に老いることなく命を維持する「永遠の命」を本当に心から望むのであろうか。
コンピューター・ウェア上、AIを始めとする人工知能メカニズムの開発は、ムーアの法則に従い加速度的進化を遂げている。近未来、人工臓器開発の延長線として人工知能を脳内移植するようになると、我々は次々に体の欠陥をインストールで補強し続けるだろう。さらに人工知能移植の結果、未来の人間の姿形は、映画『スターウォーズ』にでてくるR2D2のように今日の我々からは程遠い物体となることも想像しえるし、ともすると人間の姿などどこにもない単なるマイクロチップであるかもしれない。
永遠の命を手にした超未来の人類の容姿は、一体どんな形をしているのだろうか…300年後の24世紀、地球上に生身の人間など存在せず、今の我々は“人間の原型”として電子媒体に記録されていることだろう。
【参考URL】
『21年の平均寿命、男女とも10年ぶりに短く コロナが影響』 日本経済新聞(2022/07/29)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA286JN0Y2A720C2000000/
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