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〈世界)はそもそもデタラメである
都立大学の社会学者である宮台真司氏への暴行事件が与えた現在の日本社会への影響は計り知れない。この暴行事件を民主主義社会の原則を根幹から揺るがすテロ事件であるとして、安倍晋三元総理大臣への銃撃殺害事件と二重視する声もあるが、けして同一視すべき質の事件ではない。報道によると受傷した傷は、頸部を含めて複数か所に上るという。安倍氏の事件以降、宮台氏は日本の世俗社会におけるテロ行為や反社会的行為に対する勇気ある発言を繰り返してきた最高峰の知性を誇る学者の一人であった。言論の自由は保障されども、一部の者からは強い批判が絶えない立場にあったことは容易に想像できる。果たして本人の周りに殺害に関する予告はあったのだろうか。犯人と宮台氏に接点があったのだろうか。そうした情報さえも捜査段階にある今の時点では、何一つ公開されていない。
未だ背景が不明な点が多い殺人未遂事件である。防犯カメラ越しに立ち去る犯人の映像は公開されたが、現場には強盗を目論む証拠がなく、共犯者に関する公開情報もない。検討すべき論点は幾つもあるが、この事例において、逃走犯は所持していたナイフで殺意をもって氏を刺したのか否か、つまり刑法的に故意か否により刑事責任は大きく左右される。もともと暴行する計画があったのか、そして故意に氏を殺害する思惑があったか否かである。もし殺意を持って罪を犯したのならば、たとえ未遂であっても殺人罪を観念的に競合した裁きを受けるべきだろう。
暗闇の帰路を一人で歩いていた宮台氏の状況からすると、全くもって本人には予見不可能な事件であったと推測せざるを得ない。書棚にある宮台氏の分厚い著書『〈世界)はそもそもデタラメである』を眺めつつ、許されざる物騒極まりない事件全貌の解決と、一日でも早い氏の回復を祈りたい…
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