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小児科のすゝめ
2023年3月に発表された2022年の出生数(速報値)は、79万9,728人と過去最少を更新した。80万を下回ったこの値は、国の将来推計の予想を11年も早めたことになる。戦後の第1次ベビーブーム(1947~49年)では、日本の年間出生数は3年続けて260万人を超えていた。一年間に生まれる子どもの数が当時より70%も減少するまでに日本の少子化問題は深刻なのである。少子化は数十年前から指摘されていた問題ながら、一向に改善する兆しが無い。ここまで問題を深刻化させた過去の政権を批判しても解決の糸口はないが、今年になり岸田首相は「次元の異なる少子化対策」として、その大網を発表した。児童手当の拡充や男性の育児休業取得の促進など 年齢の若い夫婦を経済的に支援する試みや、学校給食費や高等教育を無償化する試案は同意できる。しかし、子どもの健康と健やかな成長を支援するための医療体制の構築、喫緊の課題である産婦人科医、小児科医、そして小児外科医の育成支援に関する事項が盛り込まれていないことを、小生はとても残念に感じる。少子化だから小児科医が減っても問題がないという発想は、子どもが減るから保育士と保育園を減らしても問題が無いという理屈と同様、短絡的で大きな間違いである。
国内に82の医学部を卒業して新たに医師になる数は年間約9,000人。毎年夏になると、全国各地の臨床研修指定病院では、この限られた新人医師の就職活動(いわゆる入局)の呼び込みが始まる。臨床研修が終わり自分の専門領域を選択する際、小児科や産婦人科を志望する医師は例年全体の4%前後で、その数はなかなか増加に転じない。私どもの大学小児科としても当然この問題には対峙せざるを得ないが、同じ人材資源を病院同士で奪い合っても、少子化はおろか、小児医療全体の質の向上に繋がらないのは明白である。ならば研修施設としては、限られた入局者に対して、できるだけ早期に一人でも多くの専門医を育成できる充実した臨床研修プログラムの作成が、最大の責務であろう。
【小児科PR用に制作したペン動画】
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