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Blog: Social impact issues2021.06.01

1年延期した東京大会ー競争より協調路線を

 2021年6月1日、新型コロナウイルス英国株やインド株の流行と共にオリンピック中止の声が湧き上がる中、第一陣の選手団としてソフトボールに出場するオーストラリアチームが入国した。今月中頃にはウガンダ選手団の来日が予定され、続々と各国選手団の到着が見込まれている。その一方で医療団体や労働組合からは開催中止を求める要望書が政府に提出されている。また中止ではなくとも緊急事態宣言が10の都道府県で発令されており、開催の延期や見直しも検討すべき状況であろう。しかし政府から中止の発言はない。コロナ禍の不安な開催が日に日に具現化しつつあるが、無観客やパブリックビューの問題も残されている。

 元々この度の東京オリンピックは2020年夏の開催予定が1年延期されたものである。1896年に初めての近代オリンピックであるアテネ大会が開催されて以降、延期された五輪の歴史はない。その反面、中止に至った五輪は過去に5大会ほどあるが全て理由は戦争である。1916年には第1次世界大戦によりベルリン大会が中止。1940年には日中戦争により夏の東京大会と冬の札幌大会が共に中止。1944年には第2次世界大戦により夏のロンドン大会と冬のイタリアの大会が中止となっている。また中止ではないものの1980年のモスクワ大会では、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に対する軍事介入を避難した米国ジミー・カーター大統領の呼びかけで、日本・西ドイツ・ノルウェー・カナダ・中国・韓国・アフリカ諸国を含む世界約50カ国が参加ボイコットを表明した。無論、4年後のロサンゼルス大会では、報復措置としてソ連をはじめ東側諸国が参加をボイコットする事態に至った。東西冷戦の時代、オリンピックに対する各国のスタンスが台頭する米ソの国際摩擦により2つに分断される中、英仏は相反するスポーツと政治の問題を切り離してモスクワとロサンゼルスの両大会に出場している。

 スポーツは国家間の争いではない。とりわけ近代オリンピックは「スポーツによる平和の祭典」とも称されている。この度の東京大会には世界206もの国や地域からの参加が予定されているが、世界中からこれほど多くの人々が一同に集う機会は五輪をおいて他にはない。政治経済とオリンピックを切り離すことが難しいのが国際社会の現実ならば、せめてひとときでも平和の祭典の理念を謳いたいものである。そして主催国となる我々は、国境を越えてスポーツを観戦するホストリテラシーとしてのマナーや作法を世界に啓発しなければいけない。五輪史上初の延期開催となる2021年東京大会まであと52日、開催の有無にかかわらず国際社会が今目指すべき方向性とは、競争より協調の路線である。

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