この度のパレスチナ(アラブ)・イスラエル紛争の原因は短絡的には説明できない。その起源は直接的には19 世紀末から 20 世紀初めの歴史的展開に依っている。啓蒙主義的価値観の浸透とオスマン帝国消滅は、各国のアラブ人とユダヤ人シオニスト(：ユダヤ人は一つの民族で一つの国家を持つべきという信条を持つ人々)による独立国家探求の機運を生み出す土台となった。サイクス・ピコ協定(1916)やフセイン・マクマホン協定(1915₋16 の書簡)、バルフォア宣言(1917.11 シオニスト,ロスチャイルドへの書簡)などで、第一次世界大戦後のオスマン帝国の領土配分をめぐる秘密合意が複数競合する形で成されていたことも、問題を複雑化させることになった。後にウィルソン米大統領による 14 か条と国際連盟などがこうした民族自決の動きを促進したことが重なり、アラブ人・ユダヤ人の両民族のナショナリストが同じ領土(ガザ地区を含む本係争地区)に対し権利を主張することとなった。徐々に暴力的摩擦が高まる中で、シオニストの組織的基盤の優位がイスラエル建国を強行させたものの、周辺国の承認を得られないまま現代に至っているのだ。