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Blog: Social impact issues2024.08.06

原爆の日に聴く、ロックバンド、シカゴ の異なる2つの名曲

 1923年3月3日、アメリカ・ニューヨークで創刊された”TIME誌"は、2024年で100年もの歴史を誇る世界最初の週刊ニュース雑誌である。TIMEのポリシーは、政治・経済・サイエンス・エンターテイメントなど、幅広いニュースを「人」を通して伝えることで、TIMEの誌面を飾ることは超一流のステイタスであると同時に、世の常識を覆すゲームチャンジャ―の証ともいえる。高度経済成長期には、松下電器産業会長の松下幸之助・ソニーの創業者である盛田昭夫、近年では、プロテニスの大坂なおみ・プロ野球の大谷翔平、また「人」ではないがポケモンもTIMEの表紙に登場している。

 しかし、全世界を流通するTIME誌の誌面を俯瞰する際、この雑誌が米国から世界に向けて刊行されている情報誌であるというバイアスが潜んでいることを、我々は忘れてはならない。


 ここでは広島(ヒロシマ)原爆の日にちなみ、TIMEに登場した3人の顔ぶれについて紹介する。

 まず右側、2024年7月16日号のTIMEは、スナイパーに命を狙われたことも厭わず、流血しながら右腕を振り上げるトランプ大統領である。この表紙は、1830年に勃発したフランス7月革命を題材としたウジエーヌ・ドラクロア作「民衆を導く自由の女神; La Liberté guidant le peuple, 1830」と見事に構図が相似し、読者にトランプ氏の勝利宣言を連想させる効果を演出した。

 この写真の力強さこそ、1872年から150年以上も長きに他国の追従を許さず世界第一位のGDPを維持し、地球上の45%に相当する5,044発もの核を保有する米国の力を象徴したTIMEの表紙であろう (ロシアの核爆弾は5,580発:2024年データ)。


 次に中央の表紙は、G7広島サミットが開催される直前の2023年5月22日/29日号に掲載された岸田文雄首相である。岸田氏は広島1区を基盤に「核兵器の廃絶」を掲げて総理大臣の地位へと上り詰めた人物である。しかし、顔半分が陰に隠れた表紙を見るに、裏で何かを企んでいる表情にしか見えないのは、けして個人の気のせいではないだろう。現に右下には ”Japan's choice”と記されている。もちろんここで問われているのは、世界唯一の戦争被爆国である日本が、戦後70年以上の時を経ても今なお核爆弾を投じた「米国の核の傘下」で雨宿りをしている実情である。選挙公約に従い総理の口から「日本は核兵器禁止条約を批准する」と発せられることを期待したがそれも無く、不甲斐なさだけが残る。


 そして最後の左側の表紙であるが、こちらは1945年12月31日号で、その年のパーソン・オブ・サ・イヤーを飾ったアメリカ第33代大統領のハリー・S・トルーマンである。白人至上主義者団体(KKK)への加入歴があり、1945年4月12日にフランクリン・ルーズベルトの死去を受けて、終戦5か月前に副大統領から大統領に昇格したトルーマン大統領は、現代アメリカの一般世論として「第二次世界大戦を早期終結に導き、100万人のアメリカ兵の命を救った大統領」と評価されている。

 太平洋戦争の終焉、1945年8月6日の朝8時15分にB29型爆撃機「エノラ・ゲイ」から広島にウラン型原子爆弾を、さらに8月9日の午前11時2分にB29「ボックス・カー」から長崎にプルトニウム型原子爆弾を投下する軍事計画を統治した張本人は、正式な書面による記録証拠はないものの、トルーマン大統領に他ならない。

 国家の運命が、集約された権限を有するリーダーの采配により全てが決まってしまうことを考えると、直接選挙制度でない日本にせよアメリカにせよ、リーダーを選ぶ基準として最も重要な要素は、雇用の確保、経済の安定、社会保障の充実、AIやデジタル技術の活用、法改正など全て大切であるが、ウクライナ侵攻を続ける大国ロシアや、中国・北朝鮮が絡む東シナ海情勢を考慮すると自国を守れるか否かだと私は思えてならない。



 さて、終わりにアメリカを代表するブラス・ロックバンドであるシカゴ "Chicago" の異なる2つの名曲を紹介しておく。 

 始めの曲は、1982年にリリースされたアルバム「Chicago 16」に収録され、全米シングルチャート2週連続1位を記録した"Hard to Say I'm Sorry"、邦題「素直になれなくて」である。

 相対するもう一曲は、1975年にリリースされたアルバム「Chicago VIII」からのシングルカット”Harry Truman”、邦題「拝啓、トルーマン大統領」である。この曲は最高位で全米13位を記録している。

 今年で79回目を迎える広島原爆の日、今宵は被爆国の視点から、戦後30年を迎えた1975年のアメリカでこの曲がリリースされた史実を考えながら、あらためて2つの名曲に聴き入ってみたい。




【参考URL】

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0_(%E9%9B%91%E8%AA%8C) 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BBS%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3

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