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Blog: Social impact issues2021.08.18

Number of Coronavirus Infections Increases Despite Rising Vaccination Rates

 76回目の終戦の日の翌2021年8月16日、日本国内で1回以上コロナワクチンを接種した人の数は、人口比で50.1%と過半数を超えた。また2回以上の規定接種を終えた人も37.9%と、ここに来て日々確実に国内におけるコロナワクチン接種率が伸びている。しかしワクチン接種率が上昇してきたにも関わらず、8月13日以降は1日の国内新規感染者数は2万人超に増加し、31都道府県で感染警戒レベルは最も深刻なステージ4に引き上げられた。たとえ五輪後に第5の余波があってもワクチン接種者数が増えれば、感染者数は減少に転じると予測した政府の予想が見事に裏切られた事態である。俄かにパラリンピック中止の議論が高まる中、国際オリンピック委員会(IOC)は早々にパラリンピックの無観客実施を承認した。


 ワクチン接種率が上昇したにも関わらず感染者数が増加している国は、けして日本だけではない。世界的にワクチン接種率の高いイスラエル、イギリス、アメリカの3国でも感染者数は再び増加に転じている。しかしこれら3つの国では、既にこの度の感染増に対する公衆衛生学的な措置として3回目のワクチン接種(ブースター接種)が政府主導で開始されている。

 現在、世界最速ペースでワクチン接種が進められているイスラエルでは、2020年12月19日からファイザー製ワクチンの接種が始まり、僅か1ヵ月後には230万人(全人口の3割)が1回目の接種を終え、感染者数が減少した。イスラエルで早急なワクチン接種が可能な理由は、基盤の整備された医療制度にある。イスラエルは日本と同じ国民皆保険制度が導入されているが、高度なIT管理が活用されている。国民は医療保険機構への加入が義務化されるが、ワクチン接種業務を国の保険機構が担い、医師と接種場所と国民への通知の全てをマネージメントした。イスラエルにおける国民皆保険のデジタルヘルスの導入は、IT化によって機構が全国民の病歴情報を管理しており、この基礎データに基づいて国内ワクチン接種が急速に進められたのだ。接種場所は非常に多く、病院や診療所の他、ドライブスルーやスポーツ施設も利用した。イスラエルはこのシステムの利点を活かして8月1日から60歳以上を対象にファイザー製ワクチンの3回目接種を開始し、ベネット首相自らメディアを通して国民への追加接種を呼び掛けている。

 イギリスではコロナの流行を防止するため、再度のロックダウンなど厳しい政府主導の政策が施行された。しかし同時に3回目のワクチン接種もかなり早期の2021年7月時点で開始されている。イギリスでワクチン接種がスムーズに進む理由は、ワクチンの予約・実施を地域に任せず、国営の国民医療サービスが一元化する仕組みがあることだ。もし会場でワクチンが余った場合、高齢者施設や学校等に電話し、接種施設に出向ける人を探して一早く別の人に接種する柔軟な措置も許可されている。

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、8月12日にファイザーとモデルナのワクチンを「持病のある免疫不全の患者」を対象に承認した。その理由は、感染者の死亡率が低下している今現在では、免疫力に問題のない人は早急な追加接種は後回しで施行するという医学的判断からだ。さらに9月20日からは全人口に対する3回目のブースター接種が計画されている。


 この度の世界的な再流行の背景には、今までにない強力な感染力を持つインド発のデルタ株、そしてこの8月に新たに南米から報告されたラムダ株など変異コロナウイルスの流行がある。世界のワクチン先進国は3回目接種をより早期に実施し、新たな変異株の流行に対処する構えだ。一方日本は冒頭にも記したように、1回目の接種が過半数を超えた体制レベルでデルタ株・ラムダ株の流行に立ち向かおうとしている。8月16日、河野太郎規制改革担当大臣は「2022年に備えて3回目のワクチンを確保した」と会見しているが、正確にはワクチン現物を確保したのではなく、ワクチンメーカーと契約を交わしたに過ぎない。当然予定通りにワクチンが輸入されないこともあり、8月より40歳以上に開始されたアストラゼネカ製ワクチンに加えて、急遽承認前のノババックス製ワクチンをバックアップした。しかし本筋となる対象者の選定や実施方法とその時期について、未だ具体的な計画は発表されていない。

 先週以降、全国的に日々の医療は逼迫し、災害レベルとも称される事態である。この1年半を振り返ると、政府主導で新たな感染対策がこの数か月中に敷かれることを期待しても、全く持って無理だろう。コロナウイルスに対する最も手堅い予防策は、ワクチンではなく自らを人と距離を置いた環境に隔離することである。興味深いことに、経済的な理由からワクチン政策が進まず、自主隔離政策を継続している医療資源の脆弱なワクチン後進国においては、この時期においても感染者数が増加していない国が多い。その理由は他人を当てにできない後進国では、各人自ら感染予防をしないと助からないからである。先進国でワクチン接種率が上昇しているにも関わらず感染者数が増加している原因は人流の増加に他ならない。今や政府や自治体任せでは自らをコロナウイルス感染から守ることは出来ない。我々はもう一度、感染対策の基本に立ち返り、自主隔離 (Social distance and Self-isolation) の大切さについて考え直さなければならない時期にきているのだろう。

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