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Blog: Social impact issues2021.08.23

新型コロナワクチンには精神面を安定させる副次的効果がある

 新型コロナウイルスが世界中に広がり皆がマスクを買い求めて「新しい日常」を模索する最中、突如2020年12月に米国ファイザー社とモデルナ社からmRNAワクチンがリリースされた。その途端、先進諸国は潤沢な資本を武器にコロナワクチン争奪戦に突入した。世界的なワクチン格差を是正するため、急遽WHOはワクチン資源を世界各国で共同購入して分配する国際的枠組み「COVAX」を提言。その後、この取り組みに賛同して約160の国々がCOVAXに参加している。そして2021年2月17日、国内でも厚労省認可のもと医療従事者から新型コロナワクチン接種が始まり、開始から半年後の8月16日、ようやく国内ワクチン接種率が50%を超えるに至った。


 昨今の新型コロナワクチンに対する人々の動きをみていると、アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが提唱した「マズローの法則」が頭に浮かびます。この理論は人間の心の中の内的な欲求を、生きていく上で最も下位に位置する生理的欲求、その上に安全の欲求、さらに上位に向かい、社会的欲求、承認欲求、そして最も上位の自己実現の欲求と5段階に分類した「欲求5段階説」です。今振り返るとこの半年間、mRNAワクチンの安全性に対するインフォデミックな根も葉もない議論がSNSを中心に散乱してきました。その理由として、心身ともに健康で経済的にも不安のないマズローの「安全の欲求」が脅かされた不安定な日常を、市民が長い間強いられていた関係が強いものと、私は感じるのです。

 8月に入りワクチン接種率が上昇するとともに、感染者の多くがワクチン未接種者であり、またワクチンの効果で感染者がコロナ関連で亡くなる比率が低下したデータが示されました。デルタ株と五輪の煽りを受けて40以上の都道府県で過去最高の感染者数を記録しているにも関わらず、政府が目標とする50%以下に人流が抑制されていません。一見矛盾を含んだ一連の行動現象は、ワクチン接種を終えて「安全の欲求」が満たされた市民の心に、俄かに周囲に帰属を求める「社会的欲求」や、より上位の「承認欲求」が露呈し始めたからではないでしょうか。認知心理学的な仮説ではありますが、こうした市民行動の変化は、新型コロナウイルスワクチンの接種が感染防止として効果しただけではなく、安全欲求に対する人々の不安の傷を癒し、副次的にではありますが精神面を安定させて、より高い階層の欲求を求めさせた効果があった故と言えるのかも知れません。

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