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世界は日本の総裁選よりドイツ総選挙に注目した
2021年9月26日、ドイツ連邦議会選挙の開票とともに、アンゲラ・メルケル首相が任期満了に伴い今期限りで退陣することが確定した。メルケル氏は2000年にドイツキリスト教民主連盟(CDU)の党首となった。そして2006年、ドイツ社会民主党(SPD)のゲアハルト・シュレーダー前首相以降、16年間もの長きに渡りドイツ連邦共和国初の女性首相として大国を率いてきた。気になるメルケル氏の今後であるが「2021年の任期満了後はCDUの党首選に再出馬をしない」そして「首相としての任期が終了した暁には、いかなる政治的ポストをも求めない」との意向を、地方選でCDUが大敗した3年前の2018年の時点で明言している。ヨーロッパおよび世界のリーダーたる先進国ドイツの首相として任期満了までのラスト3年間を全身全霊で成し遂げ、そして政界を去り行くと公に述べた決意は並大抵ではない。マックス・ウェーバーの書を引用するなら正に「職業としての政治家」の骨頂であろう。国政を担う政治家は、政治のプロフェッショナルでなければならない。
いみじくも調度同じ頃、日本国内では自民党総裁選挙が行われた。日本全国の都市と地方、そして若者から老人まで様々な年齢層を母集団に、どの様な手法で標準化した調査結果なのか知る由もないが、連日マスコミは支持率調査と称したパネルで「どの候補が支持率何%であるか」等、今振り返ると使いまわしの紙芝居ばかり放映していた感がある。元総理大臣に忖度しその影響が保持されている新しい内閣人事をみると、職業政治家としてのメルケル氏の潔良い引き際が、なおさら際立って思える。
昨年発表された2019年最新の世界GDP(国際総生産)ランキングによると、第1位の米国、2位の中国に続き、日本とドイツは世界194カ国の中で第3位と4位を占める世界の超大国である。同じ時期に行われた国のトップを決める総選挙に対して、本来であれば世界は日本とドイツ双方の行方を注視するところである。しかし実際に世界が注目していたのは間違いなく日本でなくドイツである。この度のドイツの総選挙で争点となった世界が注目した事柄は2つある。1つは隣国の紛争やコロナウイルスの蔓延に伴う大量の難民を移民として大国であるドイツがどう受け入れていくか。もう1つは、原子力に依存しないクリーンエネルギー政策によりCO2排出を削減したカーボンニュートラル政策を実現するために、ドイツがどの様にしてして世界に貢献できるかである。この度の日本の4人の総裁候補者の誰が首相になっていたとしても、今世界中が問題視している移民政策とカーボンニュートラル目標が、日本で劇的に変わる事はまず有りえない。
加えて世界がドイツ総選挙に注目し、日本の総裁選に関心を示さない理由がもう一つある。それは日本の総理大臣の入れ替わりの激しさだ。2006年にメルケル氏がドイツ首相に就任してから16年の間に、日本では安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦、安倍晋三、菅義偉と、8回も総理大臣が交代している。日本歴代最長となる8年余りの総理大臣在任期間を誇る安倍晋三氏の記録でさえ、メルケル氏の約半分の期間でしかない。もしも大企業の最高責任者(CEO)が8人も入れ替わったらそんな会社は即座に倒産するだろう。はて、ともすると新しい日本の総理大臣も、再び1年足らずの短命でまた交代してしまうのだろうか。世界的なコロナウイルスの流行もあり、前総理大臣は国際的な場で発言する機会が非常に少なかった。是非とも日本政権史上100代目の節目となる新しい総理には、世界第3位のGDP国として地球環境保全や保健・貧困・ジェンダーの格差に貢献・寄与できるよう、国際社会におけるプレゼンスを期待したい。
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