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日本とイタリアは首相人事の交代が頻回である
2021年10月4日、第99代内閣総理大臣・菅義偉氏が在任期間384日でその席を降りた。1945年8月、原爆の投下とポツダム宣言が受諾された後、日本では東久邇宮捻彦王や吉田茂氏以降、菅義偉氏と岸田文雄氏を含めて38回、延べ35人の総理大臣が誕生しては交代している。日本国民にはさほど意識されてない内閣総理大臣が次々に交代する現行の政権システムであるが、諸外国首脳の人事と比べると、実はかなり頻回に交代していると言わざるを得ない。
各国指導者の交代人事を俯瞰してみる。例えば共産主義国家をみると、中国では毛沢東氏から現職の習近平氏まで含めて、戦後6回、延べ6人の国家主席(総書記)がその座に就いている。さらに北朝鮮の戦後の最高責任指導者は、金日成、金正日、金正恩の3人のみである。またソ連崩壊後のロシアにしても、エリツィン氏とプーチン氏がそれぞれ二度指導者に就いているが、この再選を含めても11人、計13回しか戦後大統領が誕生していない。指導者の統率権力が強大な共産主義国では、国家の方針が一方向に明確に打ち出されているため、一人のリーダーが長く国家元首として君臨しやすい体制が維持されている。
対する民主主義国家としてG7(先進7か国首脳)を見比べてみる。米国は終戦時のフランクリン・テラノ・ルーズベルト氏以降、現職のバイデン・ジュニア氏まで、計15回、再任無しで15人の大統領が誕生している。また1990年を境に一時東西に分かれていたドイツでは、戦後西ドイツの初代首相であるコンラート・アデナウアー氏以降、今期限りで政界を退くアンゲラ・メルケル氏まで再任なしで8人の偉大な首相が政権を担った。イギリスにおいてはクレメント・アトリー氏以降、現職のボリス・ジョンソン氏まで計16回ほど首相が交代し再任者はない。同様にフランスでは17回、延べ14人の大統領が職責に身を置いている。カナダにおいては現職のジャスティン・トルドー氏が14人目の首相であり、その間の再任はない。トップ人事が比較的長く政権に就いているこれらの国では、大統領や首相が長い在任期間にどのような方針を示し、どんな業績を残してきたのか、歴史を振り返るにレガシーとして国民にとっても分かりやすい。
一方、日本と同様に首相が頻回に代わるG7の国にイタリアがある。イタリアは首相の再任が多い国で、現職のマリオ・ドラギ氏までに戦後44回も首相が交代し、この間に延べ30人の首相が迎えられた。この数は戦後35人の首相が誕生して38回交代した日本と同程度の頻度であろう。日本の総理大臣やイタリア首相を振り返ると、総じて任期が短かく頻回に交代するため、各首相が在任中にどんな政治手腕を発揮したのか国民にその成果が分かりにくい。菅義偉氏にしてもコロナウイルス問題が未解決のまま東京オリンピック・パラリンピックを断行したことで膨大な国費の出費を導いたにも関わらず、その精算もされぬまま総理大臣の座を引き継ぐことになる。日伊両国ともトップが退陣に追い込まれる契機として、政治献金や賄賂など金銭絡みの問題、大小様々なスキャンダル、さらに近年の傾向をとしてマスコミによる支持率調査やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を利用したイメージ戦略に煽られている感が否めない。しかしその主因として日本もイタリアも内閣の議会制度が共に二院制を採用している特徴があり、頻回の首相人事の交代の背景には政治システムの影響が色濃く関係すると思われる。日本では憲法67条で衆参議院の二院制が規定されるため憲法改正無しには解決の難しい問題であるが、政権交代の度に新入りで国際議会へ首相が参加する現行の選出システムでは、世界へ影響力を高めるためにも長期政権を維持する必要があるだろう。
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