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都市水害から命と生活を守るために
2021年、昨年に引き続き今年のノーベル賞も新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、式典の様子はオンラインでスウェーデンの首都・ストックホルムそしてノルウェイのオスロ市庁から公開 された。1900年に他界したスウェーデン人科学者、アルフレッド・ノーベルの遺言に基づきノーベル財団が設立され、1901年に初の受賞者が誕生してから120年の歴史を持つこの賞は、世界初かつ最も権威のある国際賞とされる。ノーベルの遺言では物理学賞、化学賞、医学・生理学賞、文学賞、平和賞の5つのみが設定されている。今日、ノーベル賞のように扱われている通称「ノーベル経済学賞」は、1968年にスウェーデン国立銀行の300周年事業として設立されたもので、ノーベルの遺言にはない。この賞はスウェーデン王立科学アカデミーが独自に選考し、ノーベル財団によってノーベル賞と同じ日に発表される経済賞である。そのため正確にはノーベル賞でなく、正式名称は「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」である。今日までこの経済学賞に選ばれた日本人経済学者は一人もいない。
さて、今年の受賞の中で特に早急に世界的な対策が必要なのは、物理学賞で再提起された地球温暖化問題であろう。「地球温暖化現象の仮想解析モデル」を開発したアメリカ人気象学者・真鍋淑郎博士の物理学賞は大変素晴らしいものであるが、そもそも問題の本質を顧みずに喜んでいられる状況ではない。我々は温暖化現象に追い打ちをかけ地球規模で急速に進行している海面上昇の脅威に直面していることを忘れてはならない。2030年に歴史ある世界遺産の街全体が水没すると警告されているイタリア・ベネチア、そして2050年に国家的な水没が警告されている南太平洋オセアニアの島国であるツバルやキリバス、度重なる都市洪水の被害に手を上げ2024年に正式な首都移転を発表したインドネシア・ジャカルタ、2017年のハリケーン・ハービーによる壊滅的な水害を被った米国第4都市であるテキサス州ヒューストン、無謀な地下開発と同時に地上に巨大ビルを建設しすぎた重さで基礎が耐えきれず地盤沈下が進行し巨大な水たまりと化した中国・北京など、現実問題、真鍋博士の発表から僅か数十年の内に、既に地球温暖化のコンピューターモデルは単なる机上のシュミレーションとなりつつある。果たして水の惑星たる私たちの未来の地球は、温暖化現象に伴う氷の融解により本当に水没してしまうのだろうか。今世界の逼迫した都市の現場が求めている対策は人命と隣り合わせの都市水害から市民の命と生活を守ることだ。政治は科学的データに基づいて行われることでポリティカルサイエンスとなる。こうして油を売る合間にも、科学者の意見を優先した政策を練ることのできる複眼的かつサイエンティフィックな政治体制を今すぐ実行すべきである。
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