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国連を無視し侵犯と核威嚇を加速するロシアに日本国憲法は無力である
国連常任理事国を構成する5カ国の一つであるロシアが国際会議や外交の場に姿を見せない。これまで中国および米国も国連安全保障理事会の場で幾度か拒否権行使をしてきたが、主要な事態で最も頻繁に拒否権行使をしているのは間違いなくロシアである。他方、英国とフランスは一度も拒否権を行使したことはなく、必ず議論の場に立つ姿勢を貫いている。2月そして3月には国連安保理決議としてロシアへの非難決議を提案したが、その際には中国が採否を棄権し解決に至らなかった。やむを得ず米国・英国・フランスに加えて10カ国の非常任理事国がまとまり、4月27日には「常任理事国の拒否権行使に対して説明を求める決議案」が採択された。しかし拒否権乱用に対するこの決議もまた暖簾に腕押しで、5月4日に開催された国連安保理事会および欧州連合政治安全保障委員会の会合にロシアの代表は現れなかった。
一連の事態を受けて、4月28日には国連のアントニオ・グテレス事務総長がウクライナ・キーウ近郊のボロジャンカとブチャ周辺を視察し、ロシア軍が侵攻中に行った戦争犯罪について国際刑事裁判所(ICC)による捜査への協力をロシア政府に求める考えを示した。しかし、またもロシアは3度続けてその要求に対する回答を拒否している。
さらにロシア軍はウクライナ領土に侵攻する間にも、周辺他国への過激な威嚇行為を繰り返している。とりわけ3月2日にスウェーデン上空を2機の爆撃機が核兵器を搭載して領空侵犯した事件は、平和的中立国であるスウェーデン軍の立場を一転させた。また同日、日本上空でも北海道根室沖の北方領土をロシア軍ヘリが侵犯している。さらに4月20日、プレセツク宇宙基地から新型大陸間弾道ミサイル「サルマト」の発射実験を成功させた。この次世代ICBMミサイルには15発もの核弾頭が搭載可能で、射程距離は18,000Kmと今までの世界のICBMの概念を覆す桁違いの威力である。もしこのサルマトが発射されたら一撃でニューヨークはおろか米国本土が完全に沈んでしまうのだ。その後もロシア軍は5月2日にデンマークとスウェーデン上空を偵察機が侵犯したのみでなく、安保理・欧州連合会合を欠席した5月4日には、先月8日に続きフィンランド空域をロシア軍ヘリMi17で領空侵犯し、さらに同日に4欧州連合加盟国とリトアニアに挟まれた飛び地のカリーニングラード州では、地上発射式の核搭載ミサイル「イスカンデル」の模擬発射を実施した。
ウクライナに侵攻するのみでなく、国際会議を拒否権行使で欠席し、国連とICCの捜査要求も繰り返し拒否、そして他国の領空を核兵器を搭載した爆撃機で飛び回り、果ては次世代核弾頭ミサイルの開発と発射実験を行うロシア軍に対して、国連安保理やICCがどんなに激しく非難し迫ろうとも、プーチン率いるロシアには、「中国と共に国際連合を脱退する」という最悪の切り札がある。ロシアは既に国連人権理事会(UNHRC)の資格停止を受けており、国際的人権問題に対して国連が如何なる要求をしようとも、今さら制裁効力を期待するのは難しい。
当のプーチン大統領は、ロシア国民の愛国心の象徴となる5月9日の大祖国戦争・対ナチス独戦勝記念日を前に、ウクライナ東部ドンバス地方のドネツクとルガンスクの2州を5月7日を期限に完全掌握するようロシア軍参謀に指令している。これから数日以内に再びウクライナ東部、そして世界でロシア軍の攻撃が激化する恐れが危惧されている…。
2月24日に勃発したウクライナとロシアの現実の戦争は、もはや遠い他国の出来事では済まされない。何故なら事実として日本から一番近い海外の国は韓国ではなくロシアだからである。長崎県の対馬から日本海を挟んだ朝鮮半島までの距離が49.5Kmであるのに対して、北海道宗谷岬から (北方領土を省いたとしても) オホーツク海を挟んたサハリンのクリリオン岬までの距離は僅か43Kmしかない。さらにクリリオン岬沖合の二丈岩岩礁までの距離はたったの36Kmである。先日の憲法記念日にも改憲の是非を問う議論が交わされていたが、机上の空論で改憲を議論する以前に、権威を失った国連、ウクライナで起きた戦争犯罪、そして世界最強の次世代核兵器を保有し他国を侵犯するロシアの軍事力を我々は瞼を見開き直視すべきである。残念ではあるが、75年も前にGHQが草案を作成した日本国憲法の下では、日本は地政学的に現在のロシアから自国の平和を守り抜くことができない。
【参考URL】
拒否権乱用歯止め狙うー常任理事国に説明責任 https://www.afpbb.com/articles/fp/3402501 afp通信 2022/04/27
ロシアから返答なしーウクライナ侵攻、ICC捜査官 https://www.jiji.com/jc/article?k=2022042800263&g=int 時事通信 2022/04/28
ロシアの核搭載機が領空侵犯 スウェーデンで3月上旬 https://www.afpbb.com/articles/fp/3402501 時事通信 2022/03/31
「アメリカへの核攻撃」を議論しながら、我慢できずに笑い出したロシア専門家 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/04/post-98559.php Newsweek日本版 2022/04/02
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